外為決済リスクの削減「報告書のポイント」


外為決済リスクとは何か

 外為決済リスクとは、外為取引における一方当事者が売却通貨を支払ったものの、(取引相手方の破綻により)買入通貨を受取ることができないリスクである。ペイメント委のオールソップ・レポート(『外為取引における決済リスクについて』、バーゼル、1996年3月)によると、現在の市場慣行では銀行間の外為決済エクスポージャーは数日間存続し、これは、外為取引の規模を勘案すると、たとえ1つの取引相手の破綻に見合うリスク額であっても常に銀行の自己資本総額を上回る可能性が存在することを意味している。

リスク削減のためのG-10中央銀行のストラテジーとは何か

 このストラテジーは、民間部門によるこの問題への対応策の重要性を強調したものである。具体的には、個別銀行が外為決済リスクを管理・削減するために採る行動、業界グループがリスクを削減する多通貨サービスを提供するために採る行動、中央銀行が民間部門の迅速な進展を促すために採る行動、という3項目に亘るアプローチを伴うもの。

リスクを削減する上でどのような進展があったか

個別銀行の行動

* 主要な市場参加者の多くは、外為決済リスクへの対応に著しい進展を遂げている。今日この問題の認識は、経営レベルを含め一段と高まっており、多数の銀行がこの問題の対応に多くの経営資源を投入している。

* 2年間のモニタリング期間中、調査対象となった多数の銀行はリスク管理に対する明確な経営レベルの責任を確立し、既に管理上、外為決済エクスポージャーを大きさおよび存続期間の等しい他の信用エクスポージャーと同等に扱うに至っている。

* エクスポージャーは幾分削減され、その測定方法も多少改善されている。

* これらのいずれの分野においても、近い将来一層の改善が見込まれている。

業界グループの行動

* バイラテラル・ネッティングは、FXNET、Valunet、SWIFT Accordによって提供されるサービスおよびIFEMAやその他の標準的な契約の利用の増加とともに拡大してきた。

* CLSサービシズという企業が設立され、外為取引の決済に当たって「即時に個々の取引をリンクさせた決済」を行う銀行(CLS銀行)を創設する計画を進めている。

* その後にCLSサービシズと、2つの既存のマルチラテラル・ネッティング会社(ECHOとMultinet)が統合されたことによって、マルチラテラル・ネッティングの将来像がよりはっきりとしたものになった。

* 伝統的な外為取引を差額決済契約(Contract for difference、CFD)と呼ばれる方法により置換えるなど、この問題に対する別のアプローチを模索している業界グループもある。

中央銀行の行動

* 外為取引の決済に潜在的な利便をもたらす新たなシステムの導入など、近年、大口決済システムについては著しい改善が施された。

* システムの稼働時間延長が実施されたり、または予定されており、異種通貨のシステム稼働時間の重なりが増大している。

* 関係中央銀行は、CLS銀行が中央銀行に口座をもつことや国内決済システムにアクセスすることに関し、CLSサービシズと議論を行っている。

* ペイメント委の代表は、外為決済リスク問題に関し各国監督当局ととともに作業を行っている。

これまでの進展は十分か

 過去2年間の進展状況を全体としてみると、外為決済リスク問題に対する取組みには有望な進展がみられ、これがさらに大きな進展へとつながっていくものと考えられる。しかし、なされるべきことはまだ多く残っている。例えば、調査対象行の多くが外為リスクの管理に明確な経営幹部レベルの責任を確立し、自行のエクスポージャーを適切な管理下においているものの、調査対象行のうち1割がこの基準を満たせていないことについて、G-10中央銀行は懸念を有している。また、エクスポージャーの測定方法についての改善は、概して低レベルからの改善である。このため、調査対象行の60パーセント以上がいまだに自行のエクスポージャーを過小評価している。さらに、現在の慣行を改善したりバイラテラルないしマルチラテラルなオブリゲーション・ネッティングの利用を増やすことによって、エクスポージャーを削減していく余地がまだかなり残っている。

 業界グループの多くのイニシアチブもまだ検討の途上にある。また、G-10中央銀行は、個別銀行が直面する外為決済リスクが、業界グループの対応策によって大幅に削減され得るとはいえ、そうした対応策だけではリスクを完全に消滅させるとは考えにくいとみている。したがって、外為決済エクスポージャーを管理するモメントが個別銀行によって確実に維持されることが重要である。

なぜストラテジーが強化されたのか

 G-10中央銀行は、1996年に当初のストラテジーを導入するに当たって、追加措置の要否を見極めるため、2年間に亘って民間部門の行動の進展状況を綿密にモニターすると発表した。そうした評価が行われた結果、これまでの勢いを持続させるためにはストラテジーが強化されるべきであるとの結論に至った訳である。

次のステップは何か

 本日公表された報告書にあるように、強化されたストラテジーは以下のように要約できる。

個別銀行の行動  自行の外為決済エクスポージャーについて適切な与信管理プロセスをまだ適用していない銀行は、速やかに対応を採るべきである。これは、自行における外為決済エクスポージャーの管理に関する現行の事務を改善することにより、個別銀行がこの問題に対処する余地がかなりあることを認識したものである。

業界グループの行動  業界グループは、個別銀行のリスク削減努力に貢献するサービスおよびプロダクトを引続き開発・提供していくべきである。これは、1996年のオールソップ・レポートにあるように、多通貨サービスは民間部門によって提供されるのが最も望ましいとするG-10中央銀行の見解を再確認するものである。

中央銀行の行動  G-10中央銀行は、ペイメント委を通じて、世界規模でこのストラテジーを推進し、進展度合をモニターし続けることとする。各国中央銀行は、外為決済リスク削減の実現に資する自国決済システムの改善を行い、あるいはこうした改善努力を継続していくものとする。また、各国中央銀行は、情宣活動、道義的説得、然るべき監督当局による措置を最適に組合わせることで、国内市場における民間部門の行動を今後とも促していく。さらに、バーゼル委は、銀行の外為決済リスクの管理に関する国際的な監督上のガイダンスを策定することにより、これらの努力を後押ししていくこととなろう。

国際的な監督上のガイダンスはどのような形を採るのか

 G-10諸国の中央銀行総裁は、オールソップ・レポートの勧告に沿った形で、外為決済リスクの慎重な管理についての国際的な監督上のガイダンスを策定することを、バーゼル委に要請した。G-10諸国の中央銀行総裁は、バーゼル委に対し、外為決済エクスポージャーに自己資本比率規制を課すことは要請していない。

以  上