バラエティー系番組に対する見解


バラエティー系番組に対する見解

2000年11月29日

はじめに

NHKと民放連は、テレビやラジオの番組を制作・放送するに際し、青少年に対して特別な配慮が必要であるという認識に立ち、平成12年4月に「放送と青少年に関する委員会」を発足させた。委員会は視聴者からの番組に対する意見を受付けているが、その数は11月28日の時点で820件に達した。委員会は毎月、寄せられた視聴者の意見を「放送番組向上協議会月報」とホームページ上で公表するとともに、いくつかの番組については放送局の見解を求めてそれを公表してきた。
委員会は視聴者からの苦情・批判のなかに、バラエティー系番組の占める比率が大きいことに注目し、バラエティー系番組のあり方を議論することとした。まず、視聴者からの意見や放送局からの回答などを検討した上で、青少年とのかかわりの深い「暴力表現」や「性描写」の問題があると思われる3番組を選んで視聴した。そのうちの1番組は視聴者から指摘のあったコーナーがなくなったため、残りの2番組、(『めちゃ2イケてるッ!』、『おネプ!』)を取り上げ、具体的に問題点を検討しながらバラエティー系番組のあり方について6回の会合で討議を重ねてきた。その過程で、上記2番組の制作責任者に委員会への出席を要請し、質疑応答も行った。この一連のプロセスを経て、委員会は次のような認識に至った。

1 委員会のテレビ放送の捉え方

委員会は、テレビ放送を次のような特性をもつメディアであると理解している。テレビは、大勢の人が同時に接触することを前提としているマスメディアであると同時に、誰でも容易に接触可能なメディアである。また、老若男女を問わず、すべての人々の暮らしに深くかかわっているメディアである。
さらに重要なことは、テレビメディアの持つ公共性である。テレビが公共的なメディアである以上、テレビ局は番組制作に当たって、とりわけ、青少年の成長発達に配慮し、知識、情操をともに豊かに育成し、テレビから悪い影響を受けないようにする責任を持つ。テレビの悪影響については、青少年がテレビ番組の好ましくない場面を模倣することが問題だと指摘する意見が多いが、それだけではなく、たとえ模倣しない場合でも、青少年がテレビ番組から深刻な影響を受けることも考えなければならない。青少年はしばしばテレビ放送の内容が、社会的に肯定されたものであると捉え、テレビから社会規範を学習する。つまり、放送内容が青少年の価値観を形成し、行動の基準ともなり得る。そのため、放送局には、品位と責任のある放送を行うことが求められる。

2 具体的な番組について

フジテレビ『めちゃ2イケてるッ!』(土曜 午後7時53分〜8時54分)

しりとりゲームをして間違えた人が罰として野武士の集団に襲われ、メッタ打ちにされる「しりとり侍」という企画は、「罰が暴力的でいじめを肯定するような内容」との視聴者からの苦情があった。番組制作者からは、「七人の侍」を意識した時代劇風の設定で、見るからに安っぽいウレタンの刀を使うなどリアリティーを排していること、また、「まねをしてはいけない」といった趣旨のテロップを入れるなどして、青少年に与える影響については配慮しているとの説明があった。
しかし、画面の中での行動が一種の袋叩きであることは間違いなく、その演出方法に必然性は感じられない。大勢で一人を叩き、仲間で笑いものにする場面はいじめの形にきわめて近いものがあり、こうしたシーンを繰り返し放送することは、暴力やいじめを肯定しているとのメッセージを子どもたちに伝える結果につながると判断せざるを得ない。また、失敗した者がリンチまがいの罰を受けるのは当然だというメッセージが伝わることも考えられる。番組の中でテロップによって視聴者にさまざまな注意を喚起する方法も、弁解さえしておけば不適切な行為も許されるという、間接的メッセージを伝えることになりかねない。特にこの番組が幼児から中学生をコアの視聴者としていることから、その影響は大きいと考えられる。

テレビ朝日『おネプ!』(月曜 午後11時9分〜11時54分)

ネプチューンが主に若い女性たちを巴投げで投げる「ネプ投げ」のコーナーについて、「投げられる際に女性の下着や肌が見えるのは不愉快であり、セクシュアルハラスメント、女性蔑視にもつながり、中高生に悪い影響を与えるのが心配だ」との視聴者からの苦情があった。
番組担当者によれば、この番組はネプチューンという3人のタレントのキャラクターを生かしたエンターテインメントであり、祈願成就を希望する団体のところへ出張して願いを聞き、女性を巴投げして幸せを授けるというナンセンスな設定になっている。会場の若い観客が参加して一緒にお祭り騒ぎをする番組で、回を重ねるごとに人気が出て、ついハメをはずすという現状もあり、お色気と下品、笑いと悪影響の微妙な線について迷いがあるという。
委員会は番組視聴の結果、カメラアングルに注目し、投げられる女性の下着がもっとも映りやすい位置からのショットが多用されていることなどから、番組が女性のスカートの中が見え隠れするのを売り物にしていると判断した。こうしたシーンを繰り返し放送することは、「のぞき」を肯定するというメッセージを伝えていることになる。また、投げるのは男性、投げられるのは女性という男女の役割がおおよそ固定されているうえに、女性の肉体への関心を引くような会話が多いことから、女性に対する差別的固定観念を植え付けるという問題点があると考える。
「ネプ投げ」は、映される当事者の同意を前提にしているが、公共性の強いテレビ
では、「当事者の同意さえあれば何をしてもよい」ということにはならない。
民放連が定めた「青少年に特に配慮する時間帯」から外れた、夜間11時過ぎに放送される番組ではあるが、番組制作者も認めているように、最近は生活習慣の変化により11時台でも小中学生がテレビを見ており、まして子どもに人気のあるネプチューンによる番組となると一層の配慮が必要である。

3 バラエティー系番組の検討の中から特に強調しておきたいこと

1)放送の公共性について認識
バラエティー系の番組で問題とされるシーンも、小劇場で特定の客を対象にしたものであれば許されるであろう。しかし、公共性の強いテレビでは、番組全体の文脈から、その表現の必然性が納得されない限り、職場、学校、街中など、多くの人たちが出入りする公共の場所で見せることが社会通念として許されない行為は扱うべきではない。人を笑わせ、楽しませることを目的としたエンターテインメント番組であっても当然公共性の強い制約を受ける。そうした認識に基づき、公衆道徳や社会良識に照らして問題がないか、ほかのさまざまな放送番組を再点検すべきだと考える。

2)番組基準などの徹底
「NHK・民放連放送倫理基本綱領」「民放連放送基準」や各放送局の「番組基準」等は、放送局が自主的に定めた倫理基準である。放送の公共性を考え、番組制作、放送に当たっての考え方を具体的に書き記しているとも言える。しかし、残念なことに今回のバラエティー系番組をめぐる放送局との話し合いの中からは、こうした倫理基準が各放送現場で具体的に活用されている様子はうかがえなかった。制作会社のスタッフを含め放送に携わる全員に、これらの基準を手掛かりに、放送の公共性についての考えが徹底され、自律規制がなされるよう各放送局の一層の努力を望む。
委員会では、取り上げた2番組が民放局の制作ということから、番組の問題点を民放連放送基準との関係で審議し、次のように判断した。『めちゃ2イケてるツ!』の「しりとり侍」のように、暴力を是認するようなメッセージを青少年が受け取りかねない場面を繰り返し放送することは、テレビ局が暴力を肯定していることを意味し、「暴力行為は、その目的のいかんを問わず、否定的に取り扱う」(62条)や「武力や暴力を表現する時は、青少年に対する影響を考慮しなければならない」(19条)に抵触する。また、放送基準審議会からの要望(1999年6月)の「''いじめ''を肯定的に取り扱わないように留意する」という趣旨にも反する。
『おネプ!』の「ネプ投げ」については、「児童及び青少年の人格形成に貢献し、良い習慣、責任感、正しい勇気などの精神を尊重させるように配慮する」(15条)、「社会の秩序、良い習俗・習慣を乱すような言動は肯定的に取り扱わない」(25条)、「公衆道徳を尊重し、社会常識に反する言動に共感を起こさせたり、模倣の気持ちを起こさせたりするような取り扱いはしない」(26条)といった規定に抵触する。また「性に関する事柄は、視聴者に困惑・嫌悪の感じを抱かせないように注意する」(72条)、「全裸は原則として取り扱わない。肉体の一部を表現する時は、下品・卑わいの感を与えないように特に注意する」(76条)、「出演者の言葉・動作・舞踊・姿勢・衣装・色彩・位置などによって、卑わいな感じを与えないように注意する」(77条)など、青少年の発達にとって重要な意味を持つ性の取り扱いについての規定にも反している。

3)放送局の責任体制の確立委員会と放送局との話し合いのなかで、放送局の主体性に問題があることがうかがえた。放送内容についての責任が放送局にあるのは言うまでもないことであり、各放送局はもう一度、原点に立ち戻って番組の制作・放送に対する自律の責任体制を確立することを要請する。その場合、番組制作がタレントのキャラクターに依存し過ぎる傾向があることや、一人のチーフ・プロデューサーが余りにも多くの番組を抱え、番組の隅々に目が届かなくなっている現実があることを認識し、その面での改善も必要である。問われているのは番組制作の現場だけではない。放送局全体で取り組むべき課題だと考える。

おわりに

今回、委員会は視聴者から苦情の訴えがあったバラエティー系番組の中から2番組を取り上げて、その問題点を検討してきたが、この2番組だけが特に問題と考えてきたわけではない。テレビ各局が青少年への影響を軽視し、公共性を忘れて視聴率競争に走る傾向が全般的に強いことは否定できない。委員会はバラエティー系番組の検討を通じて、青少年のために放送が果たすべき役割について考え方の一端を示し、放送界はもちろんのこと、青少年、保護者、視聴者団体など広く関係者に呼びかけ、議論を巻き起こしたいと考える。この見解をきっかけに、オープンな議論を展開させる中から青少年への配慮が進み、バラエティー番組を含めた質の高い放送文化が視聴者の期待に応えて発展することを委員会は期待する。
以上


1470年にニュールンベルグで制作された「知識の塔」
1548年にベルリンで制作された「法則の塔」
1500年頃に制作された鞭を持つ先生と8人の生徒
1592年に制作されたW.L.Schreiber Potsdamの教育現場
ロバに例えられた17世紀の教育
Bio-Terry & MASCAPが公開したバイオケミカル・テロの歴史
GAOが公開した生物化学兵器テロ情報
GAOが公開した化学及び生物化学兵器の状況
Googleが公開した2001年9月11日の同時多発テロ関連アクセス・ログ
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