イリジウム事業の経緯


イリジウム事業廃止についてに(別紙)として添付された経緯。

[全文]
イリジウムは世界初のグローバルな衛星携帯電話・ページャーサービスとして、1998年11月にサービスを開始いたしました。米国モトローラ社の一技術者の着想に端を発したイリジウム事業には、モトローラ社を中心とした15カ国19社が参画し、推進してまいりました。DDIグループおよび京セラを中心として1993年に設立された日本イリジウムは、投資家として事業母体となる米国イリジウム社に出資すると共に、長野に設置した関門局と呼ばれる地上設備の運用を行い、日本でのイリジウムサービスの提供事業者としてサービスの販売・提供を行ってまいりました。
イリジウムは、66機の低軌道周回衛星により地球表面をくまなくカバーし、通信インフラの全くない地域や地上携帯電話のエリア外となってしまう地域でも携帯電話一台でのコミュニケーションを可能とすることをコンセプトに開発されたシステム、サービスです。技術的なチャレンジもさることながら、既存の通信事業の枠組みを超えた制度面での改革・必要な許認可の取得、あるいは既存の地上携帯電話ネットワークとのローミングなど、各国の協力により様々なハードルを乗り越え、グローバルなサービス提供を実現いたしました。
しかしながら、端末供給の遅れや世界的な販売体制が不十分なままサービスを開始たことが要因となり、イリジウムの加入者数は当初の計画を大きく下回る状況となりました。衛星通信事業はインフラ構築に多額の初期投資を必要とするため、イリジウム衛星の所有及び運用の主体である米国イリジウム社は銀行融資や社債の発行等により資金調達を行っておりましたが、加入の伸び悩みは経営環境を圧迫し、昨年8月に米国破産法第11章(いわゆる「チャプター・イレブン」と呼ばれる会社再建手続き)の適用を申請し、ニューヨーク州連邦破産裁判所の管理下で事業再建を行うに至りました。
加入者を獲得するべくイリジウム社は全面的にマーケティング戦略を見直しターゲットを「世界中を移動するビジネスマン」から石油・鉱山・ガス等の資源開発、建設、船舶関係といった特定のニーズがある市場へと転換しました。また、通話料金および携帯電話・ページャーの端末価格についても大幅な値下げを実施しました。日本国内においても、レンタル事業者によるレンタルサービスの提供や、船舶関係に特化した販売チャネルの強化など、サービス普及に努めました。コソボ危機やトルコ・台湾大地震の際にはイリジウムは衛星携帯電話ならではの威力を発揮し、救援活動に貢献いたしました。またコンピュータの2000年問題対策として、一般企業を含めて世界的に広く需要が高まったのも、非常災害時の通信手段としてイリジウムが評価された結果だと思います。しかしながら、チャプター・イレブンによる再建途上にあることから事業の将来性に対する顧客の不安も大きく、こうした努力にもかかわらず、昨年12月初頭の世界全体の加入者数は5万加入程度にとどまっておます。一方イリジウムの事業再建のためには外部から多額の資金的援助を受けることが必要な状況であり、イリジウム社は事業への出資意向のある新たな投資家を探してまいりました。2月9日には米国通信業界のパイオニアであるクレイグ・マッコー氏が7,460万ドルの暫定融資を行うことに同意していたものの、3月3日になってイリジウムへの出資を撤回する旨を発表し、同氏の出資および経営参加を前提とした再建策が全て白紙となってしまいました。イリジウム社は3月6日に、3月17日までの事業運営費につき裁判所の承認を得て、3月15日(米国東部標準時間)を期限としてマッコー氏以外の投資家を探す努力を続けることとなりました。3月15日時点でイリジウムの資産を購入する意向のある投資家が確認されれば、連邦破産法363条に基くチャプター・イレブンの手続における競売によりイリジウム社の資産すなわち衛星ネットワークを売却する手続をすすめ、投資家がいなければ17日を限りに衛星ネットワークの運用を止めざるを得ないとしていました。
ところが期限である3月15日時点でもイリジウム社は、資産購入の意向のある投資家の確認ができておりません。また仮に、衛星ネットワークが売却されることになったとしても、購入者があらたな事業主体としてどのようにイリジウム事業を運営するのかは全く不明確であり、日本でのイリジウムサービス提供が可能なのか、果たして今後も継続提供されるのか、またいつの時点でそれがわかるのか、等々、日本での事業運営の重要な点についても全く明らかになっていない状況であります。日本イリジウムといたしましては、こうした状況ではこの先客様にご迷惑をおかけすることになりかねないことから、第一種電気通信事業者として責任あるサービス提供を続けることは困難な状態であると判断し、本日郵政大臣に対して事業廃止申請を行うことにいたしました。
イリジウムの構想が発表された1990年から10年間で、世界の携帯電話市場は予想を超える拡大・普及をみせ、イリジウムの事業環境は大きく変化しました。こと日本においては、携帯電話市場の自由化による競争原理の導入とそれに伴う料金の低廉化、携帯電話機の急速な小型化、PHSサービスの導入による市場全体の活性化などから、携帯電話は短期間で広く一般に普及し、日常的なコミュニケーション手段として人々の生活に密着したものとなりました。また、インターネットの急速な浸透により、移動体通信においてもデータ通信がより重要視される状況となっております。イリジウムは山間部や海上、あるいは通信インフラが整備されていない海外、非常災害時の通信手段として位置づけられるサービスですが、衛星通信特有の制約やデータ通信への対応の遅れが地上の携帯電話の利便性と比較され、サービス評価につながった側面は否めません。また、日本においてはイリジウムならではの特性が発揮できる局面が狭まったことから、事業を成立させるだけの十分な市場は望めない事業環境となってしまいました。
イリジウム事業に参画したものとして、イリジウムサービスを廃止せざるを得ない事態となり、結果としてお客様ならびに関係者の皆様に多大なご迷惑をおかけすることになりましたこと、深くお詫び申し上げます。今後、お客様に対する端末の買い取り等を速やかに実施し、DDIとの協力体制のもと、最後まで誠意を持った対応を行ってまいりたいと思います。昨年8月に米国イリジウム社が裁判所の管理下での経営再建手続に入り、事業の見通しが不透明な状況が続く中においても、多数の皆様のご支援を賜り、またご契約、ご利用をいただきましたことに、重ねて感謝申上げますとともに、厚く御礼申上げます。どうもありがとうございました。