水なし印刷

Waterless Printing


世界でもっとも多く利用されているオフセット印刷などでは、膨大な水を使用し、その排水が河川などを汚染している原因の一つになっていることから、水を使わない印刷が考えられるようになり、ワークステーションやパソコンで作成した版下を従来のフィルムを使わないで、いきなりPS(プレ・センシタイズ/Pre Sensitized)版に出力するCTP(Computer To Plate/ダイレクト刷版システム)やデジタル印刷機などを採用した印刷システムが登場し、1975年に東レが技術開発し、文祥堂(現文祥堂印刷)が世界で初めて実用化に成功した、印刷機から湿し水と水棒を不要にしたオフセット印刷方式の名称。「水なし印刷」は、シリコン層がインキを反発して非画線部を形成し、版面温度は28〜34℃が最適と言われ、それ以上温度が高くなると「地汚れ」が発生し、シリコン層がインキを反発し切れない状態になるという弱点があり、印刷品質上¥からは「地汚れ」寸前の状態が最適であり、もともとオフセット印刷用インクより粘度が高い「水なし印刷」用インクにとって、着肉性が良く、印刷の仕上り状態も良い結果がでるということである。詳細情報はURL(http://www.print-info.co.jp/ctp.html)で知ることができる。1978年にアメリカで産業廃棄物を下水道に排水する取り締まり強化のための条例「事前処理基準」が制定されたのち、1992年にバージニア州環境改善局は、プロモーション・ビデオを作成し、水なし版の使用を奨励、行政が印刷業者に対し、規制厳守につながる版材の使用を啓蒙するようになった。1993年9月には印刷業者40社、機材メーカー27社がシカゴに結集し、水なし印刷の採用を啓蒙する団体「WPA(Waterless Printing Association/水なし印刷協会)」が開発国の日本より先に米国で結成された。詳細情報はURL(http://www.waterless.org/)または、URL(http://www.waterless.org/NwhatIs/history.htm)または、URL(http://www.big.or.jp/~t-tam/gs3/english/html/waterless.html)で知ることができる。WPAはただちに、世代を超えて渡りをすることで有名な米国の国蝶オオカバマダラ(Monarch Buttefly)で「水なし印刷」実施のトレードマークをつくり、水なし版を使い環境保全に積極的に取組み、しかも品質の高い印刷物を製造する印刷会社にしか使用許可を認めないという、使用基準を発表した。その後、「水なし印刷」を認証するウォーターレスマーク(バタフライマーク)へと変更された。1997年、ドイツでも「水なし印刷」を実施してきた印刷業者が立ち上がり、デュセルドルフで「EWPA(Europa Waterless Printing Association)」を結成した。開発国である日本でも2002年5月31日に、「日本水なし印刷協会(JWPA)」を結成した。詳細情報はURL(http://www.waterless.jp/top.html)で知ることができる。ただし、印刷された紙を再生するときには膨大な水を必要とし、さらに多くの印刷インクはVOC(Volatile Organic Compound/揮発性有機化合物/グーテンベルグが印刷技術を開発した当時は自然のヤシから取れるアマニ・オイルが使用されていた)が使用され、その毒性を持った排水が河川などを汚染している原因の一つになっていることから、水に溶けても河川などを汚染しない印刷インクとして、「Water-washable Inks(水で洗い流せる印刷インク)」などの開発も進められているが、価格的な問題から2000年現在で「Water-washable Inks」の使用は1割強というのが現状である。詳細情報はURL(http://www.waterless.org/NwaterWashable/default.htm)で知ることができる。テレビでは、水に濡れても印刷がくっきりして流されないインクを使用していると宣伝しているが、同時にそのインクを洗い落とし、紙を再生できる技術が開発されているのか聞きたいものである。このように考えると「水なし印刷」だけでは、まだ完全な環境のために自然サイクルが構築できていないともいえる。また、印刷業界だけではなく、印刷された出版物で糧を得ている新聞社、出版社、広告代理店なども「環境問題」を表面的にとらえて話題にしているが、自身の事業内では対応できていない不思議を感じる。