ドイツの情報公開と特殊法人


特殊法人対応法人の定義

 ドイツにおける特殊法人対応法人は、一般に、法形式上、公法上の法人と私法上の法人に二分された上で、それぞれの法人が整理されている。またさらに、その他の機能的行政組織として、私人であるが行政権限の行使を担当する特許者(行政権限を委任された私人)が存在している。以下、公法上の法人、私法上の法人について整理した上で、さらに、特許者(行政権限を委任された私人)についてみておく。なお、これらの総数についての正確な情報源は今回の調査の限りでは、ないようである。
 ドイツは、連邦国家制度を取っており、連邦(Bund)と州(Land)は、国家として存在しているが、その他の行政組織として、公法上の法人(公法人)、私法上の法人(私法人)に分類される様々な法人が存在している。公法上の法人と私法上の法人との区別はその法形式上の分類であり、具体的にそこに属する法人は、歴史的、政治的な事情などから様々な法人が属することとなっている。その区分も必ずしも明確でないものが見られる。

公法上の法人(juristische Personen des oeffentlichen Rechts)
 公法上の法人とは、高権的な設立行為(Hoheitsakt)にもとづいて、公法領域および私法領域での権利能力の範囲を確定されて設置された公法上の法形式による法人である。
 公法上の法人としては、公法上の社団、営造物法人および財団の三種類がある。この三区分のいずれの特徴も持つ法人もあり(例:大学は、営造物法人と社団法人との性格を持つとされる。)、これらの三区分への分類も問題がないわけではない。  公法上の法人一般は、連邦財政法の規定(第5章連邦直属の公法人、105条以下)の適用を受け、予算、決算規定、経営計画等についての財政法的な規律を受け、所管省庁および連邦財政省の監督を受けるほか、連邦会計検査院の会計検査も受ける。

@ 公法上の社団法人
 公法上の社団法人は、人(社員)の集まりにより構成された(しかし具体的な社員の入れ替わりには影響を受けない)、すなわち社団としての性格を持ち、公権力の行使権限を付与された行政主体であるとされている。
 また、これらは、租税、分担金、負担金などの強制的に徴収される金銭負担により、その歳入を賄うこととされている。社会保険組合など、日本の公共組合にあたる団体もここに含まれる。
 公法上の社団法人は、さらにその社員の状態により、4つの形式に区分される。
i 領域団体(Gebietskoerperschaften)―ゲマインデ(市町村)およびその団体(組合)
ii現物による社団(Realkoerperschaften)―狩猟組合、工業会議所、商業会議所
iii 人物による社団(Personalkoerperschaften)―医師会、弁護士会、一部の学生自治会
iv 団体の社団(Verbandskoerperschaften)―自治体の一部事務組合など
以上の他、行政の主体とはされないが、教会も公法上の社団法人となっている。
A 公法上の営造物法人
 一般に営造物とは、物と人的手段とのなんらかのまとまりをさすが、公法上の営造物法人とは、営造物(施設)の設置主体の行政目的の継続的な追求のために設置される施設(職員を含む)で権利能力を持つ行政主体である。社団法人との違いは、社団が社員により構成されるのに対し、営造物法人はその利用者しか持たない。
 株式会社化される前の連邦鉄道、連邦雇用庁(Bundesanstalt fuer Arbeit)、公法上の放送局(Rundfunkanstalt)、貯蓄金庫(Sparkasse)などが、その具体例である。
B 公法上の財団
 もっぱら公的目的を追求し、かつ国家またはその他の公法上の社団法人に対して財団が施設のような関係におかれている、権利能力ある財団をいう。その資本その他の財産により行政事務を遂行する行政主体である。公法上の財団の特殊性は、公物権と組織権との財産的結びつきにあるとされている。プロイセン文化遺産財団などがその具体例である。

私法上の法人
 連邦および州ならびに公法上の法人は、社団、財団、株式会社、有限会社等の私法上の法形式を用いた団体を設立しまたはそれらに資本参加をすることにより、それに公共的な事務を遂行させることがある。これら私法上の法人も、行政主体として扱われることが一般的である。
 これまでドイツにおいても、行政改革、私化(Privatisierung)改革として、多くの公法上の法人が私法上の法人に転換され、また一方で、私法上の法人への資本参加または株式等の民間への売却が進められてきた。ドイツでは、多くの持株会社等が公企業として存在してきた。連邦郵便、連邦鉄道・ライヒ鉄道等の改革により設立された郵便関連の3株式会社、連邦鉄道株式会社などは、職員に官吏(Beamte)を抱えた特殊な株式会社となっている。また、多くの子会社も、私法上の法人として存在している。

Beliehene(特許者)=高権的な権限を委任された私人(=法人を含む)
 ドイツにおいては、以上のような行政を担当する団体(行政主体)として扱われる団体の他に、法形式上、行政活動を実際に担当する私人(民間の法人および自然人)が存在している。
 行政法学上も、一般的な教科書の中で、行政活動を補助する私的組織が整理されるが、その中で、内部的に行政活動を補助する私人および行政の手足として機能するが独立の判断権限が与えられていない私人の2類型(一般に行政補助者Verwaltungshelferと呼ばれる)と並んで、行政権限を委任され対外的に独立の権限行使をする私人を位置づけることが普通である。
 後者が、行政権限を特許された私人(=特許者)である。この場合、法令が通常の行政庁に「私法上の法人または自然人に対し行政上の事務を自らの名前で、公法上の法形式で遂行する権限を委任する」(特許Beleihung)権限を授権し、それに基づき、権限を委任された私人は、独立に自らの名前で行政権限を行使し、その限りで作用法上も争訟法上も行政庁として取り扱われることとなる。これらは、行政庁、すなわち機関ではあるが、権限行使の結果、自らがその権利義務の主体として扱われるわけではない。また、特許者は、法人のみならず、自然人が権限委任される場合もある。
 現在、補助金配分、許認可などの権限を委任された特許者が存在している。
 なお、最近の行政改革の中で、連邦が私法上の法人、具体的には有限会社を設立し、それに行政権限を特許した航空管制有限会社(航空管制権限の委任)やドイツ宇宙開発代理会社(補助金配分権限の委任)などの例も出てきている。
 これらは、日本の実定法上多く存在している「指定機関」(指定検査機関、指定試験機関、指定登録機関など)と類似の法的な関係におかれているといってよい。