イギリスの情報公開と特殊法人


「特殊法人」に相当するもの

特殊法人対応法人の定義

 図1は中央政府機構の図式的な整理である。各省の下に、いわゆるNext Step Agenciesがある。これは行政庁内での執行部門の別置措置であって、独立の法人格はなく、職員も公務員であり、法的には本省の一部と観念される(邦語文献として、さしあたり、宮川萬里夫「英国における行政管理の動向とその課題」季刊行政管理研究55号13頁(1991年)など)。
 日本でいう「特殊法人」に対応するイギリスの団体は、公共団体(Public Bodies)のうちの、Non-Departmental Public Bodies(NDPB、外郭公共団体)(かつてはquangoと呼ばれていた)がその大部分である。
 このNDPBには制定法上の定義はない。行政上の実務的な定義(working definition)によれば、「中央政府の統治作用において役割を演じる団体であるが、省庁やその一部ではなく、多少なりとも大臣と対等独立に運営されるもの」(UK Government, Opening Up Quangos: A Consultation Paper (1997) at para.1)あるいは「その多くは制定法により設立されているが、国王勅書により設立されたものも多少あり、いくつかは会社法により設立されている。」(Cabinet Office, Executive Non-Departmental Public Bodies 1997 Report (1997) at Introduction)というものである。

議会コミッショナーの調査対象となる公共機関との差異
 なお、このNDPBの多くは、1967年の議会コミッショナー法による議会コミッショナー(国会オンブズマン:行政過誤の苦情申立を受けて調査・救済勧告をする独立の国会所属行政監察官)の調査対象となる公共機関でもある。1967年法4条は、議会コミッショナーの調査対象機関(同法付則2にリストアップされた機関)について次のような定義をおいている。
「第4条 調査対象となる省庁等
(1).... 本法は,政府の省庁,企業および法人格のない団体で付則2に掲げるものに適用される....
(2)....(3)枢密院令により付則2に含めうるものは次のものに限る.
(a)それが
(i)政府省庁に関わるもの,または
(ii)企業または団体であってその職務が国王のために遂行されるもの,または
(b)企業または団体に関するものであるが,
(i)国王大権により,または国会制定法により,または枢密院令により,または国会制定法にもとづく命令により設立されたものであるか,またはその他の方法で大臣としての国務大臣または政府省庁により設立されたものであって,かつ
(ii)少なくとも収入の半分が国会の提供する資金,制定法により授権された課税権限,制定法により認められた手数料その他の料金,またはこれらの複数の組み合わせに直接由来しており,かつ
(iii)国王または国務大臣または政府省庁による任命を受ける者により全部または一部構成されているもの.
(4)その唯一または主たる職務活動が次項に掲げる活動を含む
企業または団体については,これを付則2に含めてはならない.
(5)前項に定める職務活動とは,
(a)教育の提供または訓練の提供であって,1982年労働訓練法(Industrial Training Act)にもとづくものではないもの.
(b)カリキュラムの開発,試験の実施,または教育課程の認定
(c)専門職業の加入の規制または専門職業の構成員の行為の統制
(d)一般市民からの苦情に対する調査...
(6)排他的にまたは圧倒的に商業的に運営されている企業または団体,または国有形態での現業企業または会社またはその一部に についても,付則2に含めないものとする.」
 この定義規定のうち、第4条3項が調査対象となりうる機関を選定する基準を示している。組織法的に国の行政庁といえるものかどうかという観点(3項a号(i)およびb号)と、国の行政を職務として行うものかどうかという行政作用に着目した観点(3項a号(ii))とが並列されている。
 他方、第4条4項ないし6項では、職務の内容(教育・訓練・専門職)または商業的性格(商業的団体,国営企業)を基準にして調査対象から除外するものとしている。このため、執行的NDPBであっても議会コミッショナーの調査対象とはならないものがでてくる(例えば、Funding Agency for SchoolsやBritish Museumなど)。

実態

 NDPBの実態は、1996年度の『公共団体報告書』(Cabinet Office, Public Bodies 1997 )においては7種類に分けて報告されている。・executive(執行的)なもの、・advisory(勧告的)なもの、・tribunals(審判所)、・Board of Visitors(刑務所管理委員会)、・Nationalised Industries(国営企業)、・Public Corporations(公企業)、・NHS Bodies(国民健康サービス機関)の7つである。
 このうち・の執行的NDPBがおそらく日本の「特殊法人」に最も多くの重なりをもつ。即ち具体的な場面での執行を国の機関として、ないしは国に代わって行うというものである。もっとも、これ以外にも・国営企業や・公企業にも、日本の「特殊法人」に重なり合うものがある。例えば、BBCは、日本放送協会にあたるものだが、これは設立形態から「公企業public corporation」に分類されている。
 以下では、執行的NDPBについて年次報告書(Cabinet Office,Executive Non-Departmental Public Bodies 1997 Report(1997))により、執行的NDPBに絞って概況を報告する。
 執行的NDPBは、1979年には492団体・職員総数217,000人であったが、1997年には305団体・職員総数106,400人に減少している。具体的な執行的NDPBとその監督官庁の一覧表は表1である。ごく例示的に財政や設立形態を示すと、Royal Botanic Gardens, Kewは、予算の70%が国の補助金。英国原子力事業団の場合は76%が国からの交付金ないし補助金。設立の形態は、British Councilは、Royal Charter(国王勅書)により1940年に設立。British Museum(国立博物館)の場合は、1753年のBritish Museum Actという法律に依っている。Housing Corporation(住宅供給公社)は1964年に商法上の会社として設立されている。

※注意点 
 本報告の執筆時(1998年3月)のイギリス法の状況は暫定的・流動的である。現行法は前保守党政権が導入した1994年の『行動規範Code of Practice』による行政実務上の情報公開実務である。しかし、1997年5月 に交替した現労働党政権は、「情報権法」を近々制定する方針を打ち出 し、1997年12月に『知る権利:情報権法要綱案 Your Right to Know: The Government's proposal for a Freedom of Information Act』(Cm 3818)を公表した。早ければ1998年の秋には法案が提出される予定である。このような現在進行中の状況を考慮して、以下では、1994年の行動規範、1997年の要綱案、また労働党が野党時代の1992年に提出して廃案となった情報権法案(1992年法案)を整理する。

対象法人の範囲画定

1994年行動規範(現行実務)

 現行の行動規範は、議会オンブズマンの管轄範囲内の団体(1967年法付則2のリストにある団体)に限定されている(対象範囲の画定基準については、2(2)ア(イ)を参照)。したがって、たとえば、教育・訓練・専門職業監督団体・商業的団体・国営企業などは対象外となる。同様に、公共放送会社も対象外となる。しかし、業務委託契約により、政府省庁のために行政職務を遂行する民間企業については、「国王のために職務を遂行する企業」(議会コミッショナー法4条)に該当するので、対象範囲内となる(Parliamentary Commissioner for Administration, Annual Report 1992, p.2)。

1997年要綱案

 要綱案は、政府省庁・NDPB・民営化された公共事業・民間委託された事業すべてを含めて、一本の情報公開法を作るという立場をとる。要綱案による情報公開法制の全体の手続の流れは、後掲図2に整理した。
情報権法の対象範囲は、政府の省庁、公共団体およびNHS、国営企業、公企業、裁判所や審判所の行政面に関する情報、警察、警察庁の行政面に関する情報、軍隊の情報等々、学校、高等教育単科大学、総合大学の情報、BBCの情報等々、制定法上の職務を執行する限りにおいて民間の組織、民営化された光熱水道等の公共必需事業の情報、契約により公的機関のために行われたサービスに関する情報にも適用される。
組織法的に適用除外されるものは、ほとんどない。ただし、Security Service, Secret Intelligence Service, Government Head Quarter, Special Forcesといった軍事の中の諜報部門、あるいは公安警察などの機密情報を取り扱う機関は、非公開としないと職務の安定遂行が阻害されるという理由で、機関単位で情報公開の適用除外になっている。なお、情報の種類で公開の対象外となるものは、公的機関の職員の個人記録、犯罪捜査、法執行のために公的機関が起こす民刑事の訴訟に関する情報、国が訴訟遂行上得た法的助言の三種類だけであると要綱案は述べている。

1992年労働党法案

 1992年の法案では1997年要綱案よりは狭く、1967年の議会コミッショナー法の付則2リストの基準に類似した規定をおいていた。「第3条 本法において「公的機関」とは次のものをいう。
(a) あらゆる政府省庁;
(b) その他の企業または団体であってその職務が国王のために遂行されるもの;
(c) その他の企業または団体であって,
(i)国王大権により,または国会制定法により,または枢密院令により,または国会制定法にもとづく命令により設立されたものであるか,またはその他の方法で大臣としての国務大臣または
政府省庁により設立されたものであって,かつ(and)
(ii)少なくとも収入の半分が国会の提供する資金,制定法により授権された課税権限,制定法により認められた手数料その他の料金,またはこれらの複数の組み合わせに直接由来しており,または(or)
(iii)国王または閣僚または政府省庁による任命を受ける者により全部または一部構成されているもの.」

 この法案の定義と議会コミッショナー法の定義との違いは、@文中の「or」(議会コミッショナー法では「かつ and」)の部分、A議会コミッショナー法では除外されていた教育・訓練に関わる機関、専門職団体、商業的性格の企業、国営企業などが除外されていない点である。したがって、適用対象範囲は相当に広がりうる。 1997年の要綱案が、かりにこの1992年法案と同様の法案となって登場するとすれば、イギリスにおける情報公開対象となる法人の特定基準は、行政組織法的な観点(法案3条a号,c号)と行政作用的な観点(法案3条b号)のいずれによってもよいということになる。問題の団体・企業の業務が「国王のための職務の遂行」と言えるかどうかは、関係する制定法に当該団体・企業の義務が明記されるであろうから、形式的に判断ができるであろう。

広く公開対象をとる実質的な理由づけ

 広くアクセス権を認め、情報の対象機関を広く認める立論根拠を、1997年要綱案から引き出すならば、次の3つであろう。

@「政府の機密は統治の傲慢を招き、意思決定の欠陥をもたらす。」(para. 1.1)
A「いかに公的サービスが運営されているか、どれだけ費用がかかり、目標が定められ、期待水準、結果がいかにあり、苦情申立の手続がどのようかについての運営上の情報」が国民には必要である(para.2.18)。これは実際の費用負担者である庶民一人一人が監視者となって行政の効率を見張れるように、市民に監視の手段を与えるという理由づけである。
B 「公的機関と民間部門との関係は、双方通行の公開性と信頼による必要がある。もちろん開示が、商業上の利益に実質的な危害を与える情報もあるだろうが、しかしわれわれは、制定法上、その他の公的任務が遂行される場合、及び公的機関と契約がある場合についても、公開性が指標となる原則であると信じる。...商業上の秘密は、一般公衆の知る権利を否定する隠れ蓑としてつかわれてはならない。」(para.3.11)これは、効率の向上以外にも、組織法上の分類でもって、情報が開示になったり不開示になったりするというのはアンフェアである、という考慮といえようか。

公開・非公開の判断

 1994年の行動規範現在の行動規範は、不開示事由を15種類掲げる。
これに対しては、
・政府はそのうちどれかに該当させて情報を結局不開示にできるとの批判、
・行動規範の不開示事由は広く一般的な文言で書かれているので、情報をカテゴリカルに非公開にしやすいとの批判、
・ 不開示の利益と公益のための開示の利益との衡量をいかにとるかについて、行動規範は明確に規定していないとの批判が1997年の要綱案によりなされている(要綱案para. 3.3)。
 1997年の要綱案
そこで要綱案は、不開示事由を7つに絞り、まず原則公開の推定を明記し、不開示利益と公益による開示利益を衡量する手続を明定することを提言している。(paras. 3.11-3.21)
不開示事由は、

@国家安全保障・防衛・外交;
A法の執行;
B個人のプライバシー;
C商業上の機密(Commercial Confidentiality);
D個人・公衆・環境の安全;
E内密に提供された情報;
F政府の意思決定・政策勧告過程の独自主体性の維持、である。
これらの不開示事由がある場合であっても、公益との衡量により公開を決定すべき場合があることを要綱案は認める。公益との衡量は、当初の公開・非公開の決定の合理性、情報公開法の目的との合致性、他の関連立法との適合性の三面を見て行うと要綱案は述べる。
 もっとも、要綱案は、NDPB(特に商業的性格の公企業や国営企業)あるいは民営化された公共事業、民間の行政受託会社の公務関連情報の公開請求に対処する場合の公開の不利益については「公開がサプライヤーや契約者の商業上の利益に実質的な危害を与えるような情報」として「営業秘密、センシティブな知的所有権、株価に影響しうるデータ」などを指摘しているに留まっている(para. 3.11)。
1992年法案
 労働党の1992年法案は、防衛、安全、国際関係、法の執行、法律上の職業特権、政策助言、個人のプライバシー、健康記録、経済・商業事項、第三者の競争的地位、機関の情報収集能力確保の11種類を非公開情報の種類としていた(法案16条ないし26条)。またアクセスを拒否するその他の理由に、実質的かつ不合理に行政機関の業務を妨害する請求、既出版文書、放送資料という三種類も挙げていた(法案27条ないし29条)。
 このうち特に、経済・商業事項についての非公開扱いを規定する法案24条は、税などの経済管理の手段の導入・廃止・変更について早すぎる公表により経済に著しい損害を生じさせうるときは非公開としてよいこと、官公庁と物品・役務の供給契約を締結する者に不当に有利な情報提供となるような場合は非公開としてよいこと、官公庁と競争関係に立つ者への情報公開が、官公庁の商業活動に著しく損害を与える場合は非公開としてよいことを定めている(法案24条1項、ただし、官公庁の物品・サービスの品質・安全性について、競争者が公開を求め、競争者の物品・サービスの品質・安全性がよりよいものであることが分かったために生じるような官公庁の''損害''は保護する必要がないので、情報公開原則へ舞い戻る旨の規定が同条3項にある)。
 また、第三者の競争的地位の考慮に関する法案25条では、公的機関に第三者から内密に提供された情報が、第三者の競争者に公開された場合、当該第三者の側に損害が生じるときは、非公開にすることができるとしている(ただし、商品・サービスの品質・安全性については、前述の原則に舞い戻りが認められる。法案25条2項) 。
 さらに、BBCについては、法案29条で放送用番組作成の過程で入手した情報を開示する記録や放送目的で作成または入手した映像または音声の録音・録画については、非公開にできるとしている。

救済の制度

1994年の行動規範
 現行実務は、処分行政庁の内部再審査にまずよるものとし、なお不満が残る場合に、下院議員の紹介により、議会コミッショナーに不服申立をできるものとしている。
1997年の要綱案・1992年の法案
 労働党は、1992年の法案当時から、情報コミッショナーを別個に設置する制度を構想していた(法案42条)。その理由は、
@議会コミッショナーが扱わない機関の情報も紛争対象となること、
A専門的な再審査機関が微妙な公益判断を伴う複雑な情報公開事案においては必要であること、
B迅速・簡易・実効的な救済機関の提供が人々の知る権利の実施を確保するものとなることなどである。
要綱案・1992年法案に示された救済制度は、原則として、当初の公開・非公開決定を行った機関への再審査の申立を前置し(法案40条・41条)、その後、情報コミッショナーへの不服申立を行うというものである(法案42条以下)。ただし、当初決定機関の規模が小さく、当初の決定担当者以外の者による内部再審査が不可能といった場合などは、情報コミッショナーへ直接の不服申立も例外的に認められる。情報コミッショナーの決定は行政処分であり、裁判所における司法審査(行政訴訟)の対象となる(法案55条)・(要綱案paras. 5.9-5.16)。
なお、労働党の制度構想では、当初の処分(公開・非公開の最初の決定)について、その適法性を、処分機関の内部審査や情報コミッショナーの決定を経ずに、直接そのまま裁判所で争うルートは封鎖されている。それを封鎖する理由は、‡@迅速・安価・単純な不服審査方法を提供するため、‡A公的機関で情報開示に消極的な機関が、決定の実施を引き延ばすために戦略的に裁判所へ訴え、裁判資力の相対的に乏しい個人申請者に不利になるという海外の経験をふまえたため(要綱案paraas. 5.8 and 5.16)と要綱案は述べている。

手数料

1994年行動規範
 現行実務では、各機関が手数料表(標準手数料を含む)を整備するものとされ、また広範な記録の検索処理照合などを要した場合は、穏当な範囲で費用を追加徴収できるとしている。
1997年要綱案
 要綱案では、手数料は公開申請料(access fee)と開示作業料(charges)の2本立てで構成される。公開申請料は10ポンド以下で各機関が決める(ただし行政庁内の不服審査申立および情報コミッショナーへの不服申立は無料)。開示作業料については、制定法または政令の示す基準に従って各機関が実費に対応した料金を課すことができるが、これは「大量のsignificant」追加作業と「多額のconsiderable」費用を伴う少数の申請事案に主として課されるべきであり、かつ申請に対して早い段階で開示作業料見積を通知しなければならない。公開申込料および開示作業料をめぐる争いは、情報コミッショナーに不服申立を行うことができ、情報コミッショナーは当事機関の課金が情報公開法に適合しているかどうかを判断できる。また、商業データベースの拡充のために情報公開法を系統立てて利用しかねない私企業・法人申請者に対しては、個人申請者よりも高い開示作業料を課すような制度もありうるが、適当かどうか諮問中である。(要綱案paras. 2.31-2.34)
公開申請料10ポンド以下というのは、1984年個人情報保護法(Data Protection Act1984)21条で、各情報保有機関が個人情報公開請求者に対して、申請手数料を課しうるものとしていることと整合させるため。
1992年法案
 労働党の1992年法案12条では、手数料(fee)は課されないものとする。ただし、10ページあたり1ポンドを越えないコピー料、録音テープやディスクやフィルムによる資料公開の場合はそれらの原価を越えない手数料、議事速記録の複製原価、郵送料については手数料として課してよいとされている。

まとめ

@イギリスの現労働党政権の1997年要綱案は、広範囲の公的機関を対象としつつ、情報公開法一本に公開法制をまとめるもの。この出発点がそもそも、特殊法人の情報公開法制度を別個に整備する立場とは異なる。しかし、要綱案に示された広範囲の公開への実質的な考慮や、実効的な公開に向けての制度設計については、参考になる。
A従来のイギリスの情報公開実務およびオンブズマン調査対象法人の特定の基準は、行政組織法的な観点と行政作用法的な観点の両方からなる。1997年の要綱案は、従来よりも作用法的な観点を強調し、対象法人を拡大したものであって、基本的な特定基準の複眼的枠組は変わらない。
B公開情報を限定する工夫として、フランスに見られるような文書の性質による絞り(対象機関の保有する文書のうちの「行政文書」だけに限るとする)は、原則として採られていない。ただし例外的に、民間企業で制定法上の職務を国王(政府)のために遂行する企業(業務受託企業など)が保有する文書の場合は、当該制定法上の職務に直接に関係する文書とそうでない当該企業の他の文書という区別は生じるであろう。
C公開情報を限定する工夫として、非公開の7利益を特定し、公開要請(公益)との衡量により公開・非公開を決定する手続枠組がとられている。これは制度として分かりやすい・単純明快である。
DNHKに相当するイギリスのBBCの情報開示・不開示の考慮は、1992年の労働党法案が参考になろう。
E不服申立制度(救済制度)は、裁判所による救済よりも、行政内部の再審査と情報コミッショナーによる柔軟かつ迅速な解決を重視する制度である。これは、商業機密情報など専門性・迅速判断必要性(経済情報による市場の変動が急速な金融分野の特殊法人など)が要求される特殊法人の情報公開制度を考える上で参考になろう。
Fイギリスにおいて裁判的救済よりも情報コミッショナーの制度が受け入れられやすい背景には、議会コミッショナー(国会オンブズマン)による行政過誤の監視・救済勧告の過去30年来のつみかさねや、地方自治体情報アクセス法(Local Government (Access to Information) Act 1985)や個人情報保護法(Data Protection Act 1984)による、情報保護官の活動実績が指摘できる。さらに、イギリスにおける行政訴訟(いわゆるjudicial review司法審査請求手続)は、1970年代後半以降に整備されたにすぎず比較的歴史が浅く、判例法も未だに流動的な点がある。したがって、イギリス法の背景に照らせば、要綱案のような裁判所の救済を極力制限する救済制度構想も現実的な選択と映る。
例えば、民営化された電力会社の行為を争う訴訟は民事訴訟か行政訴訟かについても判例は明確ではない。Re Sherlock and Morris事件(判例集不登載 (1997) 8 Utility Law Review 123に事件概要紹介)では、北アイルランドの民営化された電力会社(Northern Ireland Electricity)が、電力料金不払いの顧客に対して電力供給を停止したと
ころ、顧客がこの停止行為を、民営化政令の定める法定手続に違背して行った違法な行政処分等の理由で取消訴訟を提起した。北アイルランド高等法院は、電力会社が行う公的性格public functionの業務を主たる理由として、この訴えを適法な行政訴訟として受理した。このような見解に対しては学説の批判がある((1997) 8 Utility Law Review 123参照)。

総務庁より